抑圧という意味で去勢を知ろうとしなかった・・・
いま、フロイト全集から、14巻の『狼男』症例を読んでいます。 ラカンが引用して有名な、次の一節に引っかかりました。原文と合わせて紹介します。 彼は去勢を棄却したと私が述べたとき、この表現のさしあたりの意味は、抑圧の意味であって、去勢など知らないということである。(邦訳89頁、下線は引用者が付した) Wenn ich gesagt habe, dass er sie verwarf, so ist...
View Article下田、中ら『初老期鬱憂症の研究』8
今回は、下田門下の論文『初老期鬱憂症の研究』で検討されている症例の紹介ですが、しかしこの症例の診断は初老期鬱憂症ではありません。初老期鬱憂症と誤診せられたるヒステリー性神経症 症例8 森○謙○ 46歳、男性。主訴...
View Articleテレンバッハ『メランコリー』(19)
今回はテレンバッハ『メランコリー』の症例の検討です。この症例は、「生殖過程における危機的状況」と題された章に含まれ、ドイツ語の「Hoffnung期待」という単語が、「in Hoffnung...
View Article1年ありがとうございました
今年も一年ありがとうございました。さいきんはフロイトよりもうつ病文献の話題が多くなっていますが、このブログにアップすることが読書の励みにもなっています。...
View Articleヤスパース『原論』の再読(第四章)
先週の精神病理コロックでヤスパースを話題にした発表を聴き、ひさしぶりにヤスパースの本に手をつけてみることにしました。このブログでは、みすず書房から出ている『精神病理学原論』の翻訳の疑問点の検討を、第3章の終りまで済ませていましたので、その続きです。...
View Article復刻本がいくつか
以前もここで、クレペリンやヤスパースの復刻本について話題にしました。 久しぶりにAmazonで精神医学ビッグネームの原書を検索してみると、名著の復刻版がさいきん次々に出ているようです。日本のアマゾンでも出てきますので注文も楽なのがよいです。 まずは、ヤスパースの日本語版「精神医学総論」(岩波書店)全3巻の原版である1948年版。Allgemeine Psychopathologie Karl...
View ArticleDSM‐5の翻訳について
これは以前の版でも気になっていた点ですが、DSM-5の大うつ病性障害の診断基準には日本語版で次の一節があります(160頁)。(7)ほとんど毎日の無価値感、または過剰であるか不適切な罪責感(妄想的であることもある。単に自分をとがめること、または病気になったことに対する罪責感ではない)...
View Article今年の三冊
また一年が終わり、各新聞には書評担当者たちが選ぶ「今年の三冊」が載りました。 昨年末の各新聞社の『今年の三冊』には興味深い本がたくさんみつかって今年いくつか楽しく読みましたが、今年末の新聞には私は興味を惹かれるものがみつかりませんでした。みなさんはいかがでしょうか。...
View Article去年の三冊
昨年は本業にかまけて1年間このブログをほったらかしにしてしまいました。 新聞の書評にならって、私にとっての昨年の3冊を挙げておきましょう。人はみな妄想する -ジャック・ラカンと鑑別診断の思想-2015/4/24松本卓也ジャック・ラカン 転移(上)2015/10/28ジャック=アラン・ミレール、 小出 浩之自閉症スペクトラムの精神病理: 星をつぐ人たちのために2015/11/24内海 健...
View Articleダメな人
中井久夫著『看護のための精神医学』によれば、うつ状態では自己価値観の低下は「微小妄想」となり、自分は何もできない、ダメな人間であると思いこむ。(160頁) 一方、うつ病になりやすいとされた「メランコリー親和型」は、日本の下田は「模範的な人」と書いているが、ドイツでは「ダメな人」だそうである。(162頁)...
View Articleフロイト全集18から『神経症と精神病』2
フロイトの論文『神経症と精神病』の岩波版翻訳については8年以上前に取り上げました。 http://freudien.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/post_eafb.html 今回読み直してみて、また少し翻訳についてコメントしたい箇所がみつかったので報告します。...
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